心の構造ユングの考える心の構造影について述べるにあたって、簡単にユングの考えている心の構造について述べておく。 ユングは、心を意識と無意識の層にわけて考える。 彼は連想実験を行って、人間の心の中に、 意識の働きを妨害する様な働きの有ることを明らかにした。 それは、有る心的内容が感情によって色づけられた集合体を作り、 それが自我の統制を乱す働きを持つからであり、 その様な心的内容の集合を、 感情によって色づけされたコンプレックスと名づけたのである。 このようなコンプレックスは、 自我によって統合されていない心的内容が、無意識内に集合して出来上がるのである。 ・・・中略 ユングは精神分裂病者の妄想や幻覚を研究しているうちに、 それが、夢、未開人の心性、神話、昔話、等に使われているイメージと深い共通点が有る事に気付いた。 そして、それが生じた時には深い情動体験がともない、 イメージの普遍性が全人類に認められるので、 人間の無意識の層には、 人類に共通と思われる普遍的な層が存在すると考えるにいたった。 そこで、無意識を 個人的無意識と、普遍的無意識に分けて考え、 コンプレックスとは個人的無意識の内容であると考えた。 ところで、影を例にとってみれば、今まで示して来たように、 昔話や、未開人の信仰や分裂病者の内的なイメージ等共通に認められるのだが、 このような普遍的なイメージが存在する背後には、 人間の普遍的無意識内に、その元型が有ると仮定する。 つまり、元型は 人類の無意識内に存在する表象可能性であり、 それを意識化してイメージとして把握する時、それは元型的なイメージとなると考える。 元型そのものは意識化不能の仮説的存在であり、 そのイメージが全世界にわたって存在しているが、 逆にそのイメージの共通のもととして元型の存在が推察されるとするのである。 従って、われわれが議論してゆく時、 元型としての影、 影のイメージ、 れも個人的色彩の強い物、 普遍性の高い物等を区別して述べなければならない。 普遍的な影は 人類に共通に受け入れがたいものとして、拒否されている心的内容であるので、 それは「悪」そのものに近接して行くが、 個人的影は、 ある個人にとって受け入れ難い事で有っても、必ずしも「悪」とは限らないのである。 |